忍足侑士と幽霊との三時間目
忍足侑士には幽霊が憑いている。
彼が事故で瀕死の状態となったときに魂が幽霊のいる場所へと行き、忍足を生かす代わりに取引をしたのだ。
今の忍足は彼と魂の半分を共有している。
(わりとさらっと読めるな)
『しかし、シンプルな分、この文章を真似て書くのは難しいですよ』
三時間目の数学の時間、教師が居なかったので忍足のクラスではプリントで授業が行われた。
プリントが終われば自由時間だ。
忍足は読書をしていた。幽霊が暇だから忍足の視界から色々と見ると言い、忍足も忍足で幽霊の暇潰しに
付き合っている。読書をしたり映画を観たりするのは前からの忍足の趣味であったため、
苦行ではない。ただ、ジャンルの幅が増えた。
文庫本を忍足は読んでいる。推理小説だ。適当に借りた三毛猫が飼い主の男を助けつつ推理をするものだ。
(これ読み終わったら携帯小説でも読むか)
『現代日本ではああいうのが流行しているんでしょうか』
(そうでもないかもな。出版が楽やから? 携帯電話とかネットででよー読まれとれば、本出せば売れる? 気もするし)
疑問文ばかりになるのは本を出したからと言って売れるかどうかは別問題だからだ。
最初は売れるかも知れないが、段々と飽きられてくるのもある。
読んでいた本を十分ほどで全て読み切った忍足は本を机の上に置いた。昼休みには返して別の本を借りる。
携帯電話を取り出すと携帯小説を探し出した。
『上から二番目のを読んでみたいです』
(幽霊がリクエストした)
『たまには』
忍足は携帯電話を操作して、小説を開いた。
『……これなんで最初に団地妻が失踪して山の中に捨てられてるんです』
(つっこむんは解るけど読んでみようや。幽霊)
苦笑いをしつつ忍足は携帯電話のボタンを押す。後に読むべきではなかったと、後悔した。
割と文章がおかしかったのと展開がおかしかったからだ。
【Fin】
なんかこのふたりはいつもこうぐだぐだしてます